黒に白が射す時。
双葉は答えない。俯いて、畳の目を見つめている。
「…お前の目に、俺はどう映っていた?俺はお前を不安にさせてなかったか?思い切り甘えられたか?俺は、いい父親でいられたか…?」
「………」
「いいさ、答えなくても。でも、俺は分かったよ。…俺、最後までお前のために生きたい。ずっと自分の不幸に甘えてテキトーに生きて、我が身可愛さに罪悪感から逃れたくて育てたお前が教えてくれたんだ。
心から誰かを愛する大切さ。真心と、信頼と、献身。
信じ抜く強さ…かけがえのない、絆…。
かつて別々だったはずの死神とお前は、ペルソナという形で融合し、一体化していた。
シャドウとペルソナは素は同じ存在と聞く。
だがシャドウはペルソナすらも食らいつくすはずなのに、お前達は食い合うこともなく共存の道を選んだ。
きっと、それはお前の無垢な心故に出来た技。思えば、死神…デスは産まれてすぐに世界へ放り出された命だ。
きっと混乱して、次第に心細くもなったかも知れん。頼る者、縋る者も無く、本能だけしか植え付けられずに追いかけ回されてさ。
無償で受け入れ、愛してくれる存在…例えば母親のような存在を互いに追い求めていた故に、お前達は「一つ」になれたんだろう。
ならば、周囲の心ない者の悪意を憎み、妬み、羨み、感情を抑えきれずに暴発させてしまったお前もまた、俺の息子。
「良い子」であるお前だけを認め、「死神の凶暴性」を秘めたお前を切り捨てるなんて、傲慢そのものだ。
良いも悪いも全てひっくるめて、俺は、お前を愛している。そして、出来るなら痛みも叫びも、全て受け入れてやりたかった。
でも、もうお仕舞いか。最後くらい、お前のために、この命と力、使いたかった…」
涙がひとしずく、黒い赤子の頬に落ちる。
すると、汚れが落ちるように涙が赤子の頬を伝うと、そこだけ白い滑らかな素肌が覗いた。
赤子は、笑った。
同じく、顔を上げると目の前の双葉も心底嬉しそうに笑っていた。
「!?」
『ありがとう………ぼくの…』
赤子が、双葉が同時に同じ声で、優しく俺に囁く。
『…ぼくの、おとう、さん…』
世界が目映い光に包まれる。
身体が軽くなり、浮き上がる。
飛翔する感覚。
どこかで感じた懐かしい感覚。
そうだ、これは、高校の頃。
胡蝶の夢を、見た日と同じ…。
「成瀬陽一。君の選択、しかと見届けさせてもらった」
全身に重みが戻り、再び視界が開け、世界が輪郭を得る。
闇の中に浮かぶ、神殿の一部を切り取ったような異空間。
時計を模した丸天井から金色の柱が立ち並ぶ精神の狭間。
俺はモノトーンのツートンタイルの上に立ち、気付けばあの男と対峙していた。
フィレモン。
精神と心の仲介者。そして、全ての人間の意識を見守る存在…。
蝶をあしらった白磁のマスク。全身黒のスーツ姿。
奴は俺が高校生だった頃となんら変わりない若々しい姿で、俺の前に現れた。
「…お前の目に、俺はどう映っていた?俺はお前を不安にさせてなかったか?思い切り甘えられたか?俺は、いい父親でいられたか…?」
「………」
「いいさ、答えなくても。でも、俺は分かったよ。…俺、最後までお前のために生きたい。ずっと自分の不幸に甘えてテキトーに生きて、我が身可愛さに罪悪感から逃れたくて育てたお前が教えてくれたんだ。
心から誰かを愛する大切さ。真心と、信頼と、献身。
信じ抜く強さ…かけがえのない、絆…。
かつて別々だったはずの死神とお前は、ペルソナという形で融合し、一体化していた。
シャドウとペルソナは素は同じ存在と聞く。
だがシャドウはペルソナすらも食らいつくすはずなのに、お前達は食い合うこともなく共存の道を選んだ。
きっと、それはお前の無垢な心故に出来た技。思えば、死神…デスは産まれてすぐに世界へ放り出された命だ。
きっと混乱して、次第に心細くもなったかも知れん。頼る者、縋る者も無く、本能だけしか植え付けられずに追いかけ回されてさ。
無償で受け入れ、愛してくれる存在…例えば母親のような存在を互いに追い求めていた故に、お前達は「一つ」になれたんだろう。
ならば、周囲の心ない者の悪意を憎み、妬み、羨み、感情を抑えきれずに暴発させてしまったお前もまた、俺の息子。
「良い子」であるお前だけを認め、「死神の凶暴性」を秘めたお前を切り捨てるなんて、傲慢そのものだ。
良いも悪いも全てひっくるめて、俺は、お前を愛している。そして、出来るなら痛みも叫びも、全て受け入れてやりたかった。
でも、もうお仕舞いか。最後くらい、お前のために、この命と力、使いたかった…」
涙がひとしずく、黒い赤子の頬に落ちる。
すると、汚れが落ちるように涙が赤子の頬を伝うと、そこだけ白い滑らかな素肌が覗いた。
赤子は、笑った。
同じく、顔を上げると目の前の双葉も心底嬉しそうに笑っていた。
「!?」
『ありがとう………ぼくの…』
赤子が、双葉が同時に同じ声で、優しく俺に囁く。
『…ぼくの、おとう、さん…』
世界が目映い光に包まれる。
身体が軽くなり、浮き上がる。
飛翔する感覚。
どこかで感じた懐かしい感覚。
そうだ、これは、高校の頃。
胡蝶の夢を、見た日と同じ…。
「成瀬陽一。君の選択、しかと見届けさせてもらった」
全身に重みが戻り、再び視界が開け、世界が輪郭を得る。
闇の中に浮かぶ、神殿の一部を切り取ったような異空間。
時計を模した丸天井から金色の柱が立ち並ぶ精神の狭間。
俺はモノトーンのツートンタイルの上に立ち、気付けばあの男と対峙していた。
フィレモン。
精神と心の仲介者。そして、全ての人間の意識を見守る存在…。
蝶をあしらった白磁のマスク。全身黒のスーツ姿。
奴は俺が高校生だった頃となんら変わりない若々しい姿で、俺の前に現れた。
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