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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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背中に立つ者は。
*

月光が暗緑色に街を染めている。
元々寂れた港町の、さらに活気の薄い港湾区域とはいえ、人気の消え失せた場所というのは歩くだけでも薄気味悪い。
足下には血溜まり。
横を見れば血の海に浮かぶタンカーのドック。
倉庫の影から見える、遠く離れた臨海公園の物陰は棺桶。
あの中にでもこの一時隠れていられたら。

「…いかんいかん。かんおけなだけに、い棺い棺…はあ、笑えない…」
そんな事をちらりと考えて、幾月は我ながら余裕のないことだと自嘲が口元に浮かぶ。
コートもセーターも無い汚れたスーツ一丁だけでは、真冬の寒さが身体に堪える。
全く、骨折り損のくたびれもうけを身を持って体感し、全身はぐったりとした疲労感でへとへとだ。
予定の狂いは一番自分の嫌う所だ。
「計画」を大きく変更せねばなるまい。

堂島は、自分はせいぜい桐条を乗っ取り億万長者になるくらいにしか考えていないようだ。
甘く見てもらっては困る。
桐条どころか、私はもっと尊く、いと高き者になるのだよ。
予言も全て私の成功を約束している。
最後に笑うのはこの私、幾月修司なのだ!

「よお幾月」

背後から呼び止められ、全身が猫の如く総毛立ったのが分かった。
すぐ真後ろに立つ、男の気配。
それは、幾月にとって既に在るはずの無い気配だった。

おそるおそる振り向く。
白髪の増えた頭髪。がっちりとした中肉中背の黒コートの男。
予想通りの、ここに居るはずがない人物が不敵な笑みをたたえて立っていた。

「!…な、成瀬さん…何故、貴方がここに…」
「ああ、ちょっと地獄の渡し守と交渉してきたんだ。俺の分け前全部やるから、あいつをぶっ飛ばす時間をくれとな」

ひい、と短く呻いて立ち去ろうとした幾月の首根っこを手早く掴み、陽一は憤怒に充ち満ちた顔をにじり寄らせる。

「ついでにここまで送ってもらった訳だが…全部聞いたぜ?双葉はどうした。堂島と榎本はどうした。吐け」
「はは、知りませんよそんな…ウボェ!ゴホッゴフォゴホ…ら、乱暴止めてくださゴホッゴホ…」
ネクタイを掴んで力任せに締め上げると、簡単に幾月は泣きそうな顔で全面降伏のバンザイを挙げた。

「真面目に答えろ」
「真面目にやってます…そもそもは、貴方のご友人がいけないのですよ?元々未完成のできそこないデータを再生させ、死神を故意に暴走させたのですからね。お陰でこの有様です。泣きっ面に蜂とはこの事だ」
「未完成のデータ…エウリュディケとかいうやつか」
「ええ、よくご存じで。狗神君が命がけで持ち帰った日向の形見ですよ。もしかして、貴方もごらんになったのですか?」
俺が黙って眉間にシワを寄せると、一瞬得意げに鼻を膨らませた幾月は途端におどおどと口をうわずらせる。
根が小さいくせに、身の丈以上の事をしたがる。
ああ、だから俺はこいつが嫌いだったんだ。
俺と同じ、出来ない事をしようと粋がる。
そう思い、陽一は目の前のずる賢い雇われ理事長に心底哀れと憤りを感じた。

「…榎本さんは既に解放しています。あの死神を宿した少年なら、今頃死神が懸命に守ってるはずでしょう。堂島さんに随分追いつめられていましたが、途中で別の巨大シャドウの横やりが入りましてね。その混乱に乗じて逃げおおせたのですが…あなたの息子さんはともかく堂島さんはどうだか」
「そうか。ありがとよ」
お礼代わりに、陽一は右膝を幾月のみぞおちに思い切り蹴りこんでやる。
短く呻いて幾月は地に這いつくばりゲホゴホと咳込みうずくまる。
普段はデスクワークばかりの頭でっかちらしく、しばらく立ち上がれそうもない。
殺意は自分でも驚くほど、沸いてこなかった。

一応ポケットを探っておき、出てきた拳銃を濃い緋色に満ちた海面に投げ捨てる。
これで、シャドウが来ようが誰が来ようが、影時間が明けるまでこいつは無力だ。

「おっと、忘れるところだった。こいつ、やっぱり返しておくよ」

陽一は身体を丸めてうずくまったままの幾月の眼前に小さな粒をパラパラと捨てて、駆け足でその場を後にした。

「…?」
おそるおそる幾月は陽一の蒔いていった物質を確かめ、戦慄を覚えた。
自分が病室に置いていった、治療薬の錠剤。あの時のままアルミ封された状態で。
数は、自分が置いていった数だけその場に捨てられていた。

「馬鹿な…ペルソナの力をもってしても慢性的な腫瘍の進行は妨げられないはず…ならば、どうやって…」

痛みを堪えてそろりと立ち上がり、陽一が駆けていった方をおそるおそる覗く。
そこにはもう、人影すら無かった。












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