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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

友の目に映る己とは。
*
「あの爆発事故の日、俺は混乱に乗じて仲間と監禁場所から逃げ出し、お前達を助けに行くと言って単独で中枢部へ向かった。勿論鴻悦をしとめるためだ。…だが予想以上のシャドウの群れに思うように進めなくて、次第に焦りを感じ…そうこうしている間に偶然テテュスからの通信を拾った。拘束された際に没収された通信機を取り返しておいたんだが、俺は随分シャドウ研究部の奥まで来ていたらしい、あの時は誰とも通信が繋がらなくなっていた。本懐成し遂げぬままに死を覚悟していたぐらいだった」

だが、偶然は堂島に一つの選択肢を与えた。
しかも、もっとも彼が情熱を傾けた娘へと因果の糸を結び、不幸の連鎖へとたぐり寄せた。

「俺は命じた。桐条鴻悦を、事故の全責任を取らせるために抹殺せよと。テテュスは勿論反論した。それは自分たちでなく行政や司法の範疇であり、そもそも自分はどんな人物であれロボット三原則に基づき殺傷よりも生存と保護を優先する立場にある、と。しばらく、と言っても数分とかからぬ間、俺とテテュスは押し問答を繰り返し、結局折り合いは付かなかった。テテュスは混乱した様子だった。無理もない。今まで最優先で守るようプログラムにも書き込んである人物を殺せ、と命じられたのだからな。だから、俺は」

そこまで淀みなく話し、堂島は唐突に言葉を切った。
ごくり、と重くツバを飲み込む音だけが聞こえた。

「…通信機に仕込んでおいた、緊急時向けの遠隔用オルギアモード作動プログラムのスイッチを強制的に実行した」
「?!…お前、何時の間にそんなものを!」
「俺の携帯用通信機に、こっそり組み込んでおいた。娘達のメンテナンス用の制御コードをコピーし、いざとなれば全員俺の手で簡単な指示命令を下してオルギアモードに転換し敵に突っ込ませる事も可能だった。お前、通常はほとんどデスクワークをしてなかったし、主任のくせして仕事は個々人に任せっきり。仕切る立場がそれなら仕込む時間もタイミングも充分あった。…お前、今失望したろう?」
「……」
「でもな、俺は安心出来なかった。俺はこのときのために生きてきたんだ。偶然大きな力を得て、どうにか組織に紛れ込み、偶然理解者を得て、仲間を得て、自分の意志で自由に出来る『兵器』をも手にして、それでも俺は万全を期しておきたかった。お前を信頼していなかった訳じゃない。それ以上に、お前の迂闊さと感情的な部分が、俺には恐ろしかった。俺には無い、人を引き付け安心させる魅力を、才能を、カリスマを持っていながら、お前はいつでもそれを大した物でもないように出し惜しみしていた。それがどれだけもどかしかったか分かるか?どれだけ俺を苛立たせていたか!…世界は俺を中心に回っているんじゃない。そう分かっていながら、俺はあの時だけは、自分が世界の中心に立ち、何でも俺のために、俺の思うように動くと信じた。お前が、いつもそうやって世界を歩いていたようにな」
「どう、じま…」

他者が己をどう見ていたか、どう見ているか、正確に知る者など、この世に何人いる事だろう。
あんなに冷静で、思慮深く、何でも理路整然とスマートにこなし、涼しい顔で無理難題をほどいていた相棒の中に、これほどの情念がとぐろを巻いていたなんて。
自分にも覚えのある、あの赤黒い憤怒の蛇。
理性の腹の底で舌なめずりし、俺にガラティアの仮面を創れと囁いた怒りの化身。

勘が鋭く鋭敏でクールだったはずの相棒が、氷の仮面の下に、同じく醜い顔をした蛇を飼っていた。
そして、それはきっと、自分と同じ顔をしていた。
日向にどす黒い嫉妬をたぎらせ、完膚無きまでに叩き潰す事ばかり考えていた、あの時の自分と。

堂島は、自嘲し白い息を吐いた。

「…テテュスは、俺の望んだ通りに動いた。指示通りビップルームに乗り込み、その場で救助を待っていた桐条鴻悦を、救助と勘違いしヘラヘラと近づいてきた役員もろとも銃撃の的にしてやった」












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