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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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消えた思い出、大事な宝物。
*

初めて双葉のペルソナが暴走したのは、冬の日の誕生日から、十日後のことだった。
双葉はマフラーが相当気に入ったらしかった。体育の時以外、ずっと肌身離さず身につけていたそうだ。
それが、クラスのガキ大将には気に入らなかった。
しかもそのガキ大将は頭も良く、金持ちで結構女子にもてる方だったのに、双葉が来てからテストでも跳び箱でも競争でも女子のラブレターの数もあいつに勝てなくて随分ご立腹だったらしい。
下校中に、坂の上にあった人気の少ない児童公園に無理矢理連れて行き、貧乏人の子供がブランド物なんかつけてくるなよと、マフラーを取り上げ、仲間と一緒に踏みつけにした。
「返せ、おとうさんのプレゼントかえせ!!」
数人の手下の生徒に囲まれ、無理矢理取り上げられて泣き叫ぶかと思いきや、双葉は珍しく憤慨して掴みかかっていったという。
しかし、ガキ大将軍団は複数。双葉はまだ身体も小さかったし、ケンカに慣れていない。
何度も何度も挑んで、何度も押し倒され、セーターもズボンも泥まみれにされて、それでも泣きながら取り返そうとした。
あまりのしつこさに、ガキ大将が双葉の手を振り払って、無意識に押し倒した。
その先には、傾斜のある何十段もの階段があった。
ぐしゃ。
後頭部がスロープに直撃し、双葉は階段から転げ落ちた。

双葉の意識がはじけ飛んだ瞬間、生存の本能に従い、あいつの内から「死神」が覚醒した。

…双葉と、ガキ大将と連れの子供達はその後近所を通りかかった人によって、全員病院に搬送された。頭部に怪我を負った双葉も含めて全員が重傷だった。
第一発見者の証言と、病院の診断書から、「悪質な通り魔が子供をめった切りにして逃走した」…と警察は判断した。
その後全員意識が回復し、一命も取り留めたが、容疑者の話になると双葉以外は口を揃えてこう答えた。

「双葉の中から、真っ黒い悪魔が出てきた」と。

その後、退院と同時に俺達はその街を後にした。
双葉の怪我は驚くほど早くふさがったが、一時期話がまともに出来ないような状態に陥っていた。
体温がおかしくなり「さむい、さむい」と言い続け、毎晩どろどろの真っ黒いお化けに襲われる夢を見て泣き叫んだ。
心はしばらく不安定で、毎夜ごとに俺の寝床の傍らに立っては、「入って良いぞ」というまでその場で待っている。
そして、必ず「ごめんなさい」と繰り返し呟いてはすすり泣いた。

マフラーは、その事件の後どこを探しても見つからなかった。
死神が、満月が近づく度に、影時間の中で姿を現し始めたのは、その時からだった。
そいつは満月の前後一週間ごとに双葉の枕元に現れ、幼い少年の姿で双葉が目覚めるのを待っていた。
双葉は目覚めることはない。
俺が、共に施設を出る前に何重にも催眠術を施し、影時間に覚醒しないようにしておいたからだ。
それを知ってか知らずか、死神は見張りにやってくる俺の心を見透かすかのように、いつも愛らしい笑みを浮かべている。

ぼくは、フタバのともだちだよ。初めて会ったとき、あいつはしれっとそう答えた。

それから、度々双葉の身に生死の危険が近づく度、「死神」はあいつの与り知らぬ所で覚醒し、敵を退けた。
双葉は、何一つ覚えていない。まるでそっくり無くしたかのように、前後の記憶まで消える。
マフラーの時も、そうだった。
「…きょう?…きょうは…おたんじょう、び…?」
病院で目覚めたとき、日付を問うとそう答えた。
それからも、誕生日当日から何してたかを尋ねようとすると、後頭部に走る猛烈な激痛で泣きわめいた。
もっとも、記憶の消失に関してだけ言えば…俺が双葉にかけた、記憶を封印する催眠暗示のせいなのかもしれないが。

死神の覚醒は、総じて事件…同級生に大怪我、影時間に襲ってくる刺客を惨殺等、週刊誌が好きそうな怪事件を引き起こし、それは周囲の視線だけでなく自分たちを狙っている者たちの注意すら引き付け、さらなる危険を呼ぶ元になった。
その度に、何も覚えていない双葉に転勤だのクビになっただのと言って別の街へトンズラする。

それの、繰り返しだ。

影時間にふいを突かれ、双葉が刺客に襲われる事も二度ほどあった。
その度、ファルロスは黒衣の死神の仮面をまとい、無数の棺桶を背負い現れ、双葉を守った。
双葉の安全が守られるのは有り難い。だが、双葉を死神にくれてやる気はさらさらない。
偶然とはいえ、覚醒されてしまった時点で俺は内心焦りを感じていた。
しおらしい子供の姿をした死神が俺の前に立つ度、言いようのない焦燥感と苛立ちを覚えた。
いつか、こいつが俺の前から大事な一人息子を奪っていく。
そんな確信が、俺の中にあった。

ファルロスは、去り際にいつも「フタバをよろしく」と言って去っていく。
その後に必ず、「いつか、準備が出来たら迎えに行くからね」と付け加えて…。

「…そんなこと、させるかよ」
無意識にそう呟いて、俺は双葉の布団からはみ出した手を握り、布団の中に入れてやった。

「………おと、う…さ…ん…?」
…枕元でうつらうつらしていたらしい。
慌てて顔を起こすと、布団の中で双葉がこちらを見て、力無く微笑んだ。
「…手、握っててくれたの?」
気付かぬ間に、両手で双葉の細い手を握りしめていた。重ねた手の内側は、熱い。
「…ん?あ、ああ…」
「よかった…ほっと、した…ありがと…」
そう言って、双葉はまた目を閉じた。
そろそろ、冬場の遅い夜明けが来る。
旅支度を、始めねばなるまい。陽一はそう思いつつ、息子の手をとったまま再び仮眠に入った。












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