3373plug-in

ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
汚泥の底で蠢く鉛。
*

「…榎本さん、どうしてここに?」
「見ての通りだよ。助けに来た。…君と同じように、悪い連中から逃げ出してきたんだ」

悪い連中。
脳裏におぼろげに浮かぶ、宅配を装って自分を襲った怪しい男達。
ずきり、と重い痛みが胸の奥に走り、双葉が顔をしかめて胸元を押さえると、心配そうに榎本は駆け寄り肩を支える。

「痛い?どこが痛む?」
「へいき…です…ときどき、いたくなる、いつもの古傷ですから…」
そうは言われても、とても平気には見えない血の気の抜けた表情で双葉はその場に再び倒れそうになる。
「おおっと」
慌てて抱き抱えると、榎本は膝を枕代わりにあてがい双葉を横にさせる。
途端に、双葉は全身を支えていた力が抜け去り、苦しげに顔をしかめたまま浅い呼吸を繰り返す。
「苦しい?」
「………」
答える代わりに、表情が険しくなる。力無く垂れた左手を握りしめると、微かに指を掴んだのが分かった。
シーサーが双葉の側にそっと歩み寄り、腰を下ろす。

榎本はそっと目を閉じ、意識を集中させる。

「(…きっと幾月の実験のせいだ。乱れた心を整えれば、肉体の不調も回復するはず…)」

ビジョンスキャン開始。
意識を、そっと双葉の深層意識に潜らせる。

黒いタールのどろどろとした渦。
それが回る。腐ったチョコレートが攪拌されていくような、腐臭と胸を塞ぐ汚泥の沼地。
不安。恐怖。

畏れ。負の感情が、双葉自身がもっとも畏れている過去へと誘う。

イタイ。イタイイタイイタイイタイ。イタイヨウ。
コワイ。コワイ。コワイ!タスケテ、タスケテ…!

榎本が心を身構える前に、突然映像が目の奥まで飛び込んでくる。

あああああああん。あああああああああん。ああっああああああん。

燃えさかる炎。焼け付く折り重なった車のスクラップ。
鼻を突く刺激臭。濃厚なガソリンの燻りに混じる、不愉快な焼けこげた煙の匂い。
これは、人が焦げていく匂い。…一度嗅いだら、嫌でも鼻孔に染みついて離れない匂い…。

子供の泣き声が至近距離に聞こえる。
違う。
これは双葉君の泣き声。
目の前の人影に怯えて泣き叫んでいる。

「いや…やだ!こないで!」
「…任務遂行のための器確保…港区周辺の人命きゅう…じ…のため…やむを得ません…」
煙に霞んだ目前の人影は、チューナーの合わないラジオにも似た、掠れた抑揚の無い女の声を発する。
左手に激痛が走る。
腕を力任せに掴まれ、もがく度に金属の指が柔らかな二の腕に食い込み双葉は更に泣き叫んだ。

風が吹いた。
視界がクリアになる。
身体を右方向に傾げた、金髪の青い目をした機械の少女が立っている。
胸元には大きな赤いリボン。
左肩はもげ落ち、腕があったであろう箇所からは束になったワイヤーとケーブルの束が火花ではぜっている。
全身の動きは不規則で、ネジを巻きすぎたブリキのロボットのようにかくかくと全身を震わせて迫ってくる。

「やだ…やだ……やだああああああああ!!やだっ!いやあああああ!」
「…器確保。黄昏の羽、かくにん…かくにん…デスの仮そめの封印がほどけるまで、後5分25秒…」
無意識の中で機械の少女=一度だけラボで見せてもらった、ガラティアの妹機、アイギスと目が合う。
姉達のいきいきとした、生気を感じさせる瞳の輝きは無く、代わりにマネキンの虚ろな視線がこちらを凝視している。
あの時開発者である第二チームは当日に全員拘束されているため、誰が起動させたかは分からない。
だが、これは…おそらく起動段階で失敗している。
ペルソナを発動出来たのかどうかすら怪しいほどに感情の希薄なロボットの少女は、今眼前の問題を粛々と処理するために、少年の感情を無視しようとしている…。

「おかーさああん!おじちゃああん!…誰か、だれかああ!!」
「黄昏の羽、力を解放…これよ、り、完全な封印を…」
彼女の頭上で、ペルソナが姿を現す。
成瀬さんがいつぞやか語っていた、こいつのは勝利を呼ぶ石像なんだぞって。
ブロンズの石像=パラディオンがアイギスの頭上ではっきりとした輪郭を得て具象化する。
その胸元に、金色の輝きを放つ核金があった。

黄昏の羽。
その場に偶然居合わせ、少年を守ろうとして死んだ姉ガラティアのコアだったと、妹は知っていたのだろうか。
いや、きっと少しでも核に遺された思いを汲み取る事が出来たなら、彼女は少年へと刃を突きつける事をためらっただろう。
同じ使命を帯びて産まれたはずなのに、姉と妹は、同じ思想の元に真逆の判断を行った。

「たすけて、たすけて!…オルフェウス!!!」
身の危険を痛いほどに感じていただろう。
双葉の頭上に幼い吟遊詩人の幻が現れ竪琴を手に身構える。
同じく、ブロンズの女神像の影が揺らめき、金色の妖しい光に全身が包まれる。
その光の炎に焼かれるように、禍々しい死神の幻が絡みつき、咆吼を上げる。

黒い影は瞬く間に金色の光に呑まれ、パラディオンの頭上に輝くドリルの切っ先に光が塊となって集約されていく。

「です…ふう…いん…かんりょ、う…本機…レイ…あっぷしすてむ強制…てい、し、まで…あと、いっぷん…」

アイギスの全身が激しく震え出す。ネジが、装甲が、頭部のイヤーファンが音を立ててアスファルトへと崩れ落ちる。
破損した肩口から、頭部のファンから火花を散らして、アイギスは叫んだ。

「…このしょうねんを、デス、器として、とうろく…じかい、きどうじに…たそがれのはね、うめこみ、たいしょうとしてかくほ、してい。
…ぱら、でぃおん!」

パラディオンの切っ先が、身構えたオルフェウスの胸元をためらう事無く貫く。
背後に居た少年は、幻影と同じ姿で弓なりに仰け反り、全身を駆けめぐる激痛に叫んだ。












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://3373plugin.blog45.fc2.com/tb.php/91-9834e006

| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。