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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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月影に吠える。
*

榎本のパッと見の見解で適当に選んだ、廃ビルの屋上に上がる。
非常階段を上がった感じから、7・8階くらいの規模だろうか。
つい最近閉鎖されたようで、一年前にオープンした全国チェーンのスーパー開店チラシが段ボール詰めされ無造作に捨てられていた。
それと一緒に捨てられていた、色褪せた未使用の連続伝票の束が侘びしさを感じさせる。

「丁度いいかな」
シーサーから降りると、ファルロスは埃まみれのひび割れたコンクリの床に立ち、辺りを見回す。
目線の先に、不気味なほど大きい満月が見える。
影時間はいつもこうだ。禍々しいほどに妖しく輝く月。それが、いつもよりも大きく見えるのだ。
錆びた手すりに掴まり、ファルロスは左を見て、右を見て、下を覗き込んで、軽く溜息をついた。

「ねえおじさん、ペルソナとシャドウって同一の存在だって知ってる?」
「…え、し、知ってるよ」
一瞬何を言い出すのかと動揺したが、榎本は出来る限り強気に答える。
背負っていた双葉を出入り口の側に横にし、コートを羽織らせると榎本は身じろぎもせず満月を見上げるファルロスに近づく。

「そうなんだ。意外」
「バカにしてる?残念、これでもエルゴ研以来からずっとペルソナに関する資料をかじり読みしているからね。今じゃあまり知られてない知識も幾つか聞きかじってる」
「へぇ」
感心しているのか、「それで?」と思っているのか、ファルロスは大人びた横顔をたたえたまま榎本に向き直る。

「じゃあ、シャドウとペルソナの違いって、何か分かる?」
子供らしい、素直な疑問の問いかけ。
そう感じた榎本は、邪推せずあえてありのまま自分の意見を述べる。
「己の内の悪しき欲望に屈するか、そうでないかの違い…じゃないかと僕は思ってる。…まあ、逃げ回ってばっかりの僕が言えたセリフじゃないかも知れないけど…」
「そんな事ないよ。自分の非力さや無力って、中々認められるものじゃないもの。
その上で自分に出来る事を探して得た能力なんでしょう?だったら、もっと胸を張って良いと思うよ」
「あ、うん…それって、褒めてる?」
「一応は、ね。…だけど、僕の考えとは少し違うかな…」
「と、言うと?」
少年は、少し悲しげに俯き、足下のレトリバーを静かに撫でる。

「…僕が今まで彼の内に居て得た結論だと、シャドウとペルソナの違いはたった一つ」
「それは?」
「『死』の欲望に呑まれるか、そうでないか」
「『死』…?」
「人は刑期100年の死罪を背負った存在だと、誰かが言ってた気がする。ならば、その100年を精一杯生きるか、それとも自らの安楽を得るために自らの手で死を望むのか…いや、そもそも『死』など無かった時代、突然現れた滅びの母に抵抗し日の光の下に暖かな命が増えるのと同様に、滅びの母に魅せられて、生きながら死を望む者を喰らい、月明かりの下で僕たちは増え続けた…」

「…えーと、つまり、どういう事?」
「何で、僕がおじさんを信用したのか分かった気がする。おじさんは、日の光の匂いがする。僕らのお義父さんもそう。お義父さんはおじさんよりももっと濃い感じ。
…そう、ひだまりだ。
シャドウに触れてなお、そうして明るいオーラを出していられるのって、凄いと思うよ」
「え、そうなの?なんだか照れるな」
「…でもねおじさん。もっと僕らの事、知っておくべきだったかもしれない」
「…え?」
「僕らは天上の母に憧れる。一つになり、解け合いたいと天を仰ぐ。だけどそれ以上に、僕らは陽の光が欲しいんだ。だってそうでしょう?僕らの母なる存在は、毎日毎夜、陽の光を溢れんばかりに浴びて生から死を産み、煌々と輝いている…僕らもああなりたい。そのために、陽の下に立つ者を喰らい、舐め、吸い尽くし同胞を増やす。僕らは、それしか知らずに育つから」
「………」
「僕は幸福だったんだ。だって、すぐ側にあたたかな日だまりが在る。そして、その隣には僕らを包んでくれるもっと大きな光が在った。陽の母、そして父。僕はあの場所にずっと居たかった。日当たりのいい、ぼくらの家に…。でも、もうそれも崩れていく。天上の母が呼んでいる」
「天上の…母」

滅びの女神。十年前の、悪夢が思い起こされる。

「おじさん。シャドウはペルソナと同じって知ってたよね?ならば何故気付かなかったの?…貴方と、同じような能力を持つシャドウが居る可能性に」
「…なん、だって?」

その瞬間、ファルロスの全身から凍り付くような殺気と濃厚な力の波動が解放され、榎本は全身を貫いた恐怖で一瞬動けなくなる。

「薄々もしかしたらと思ってたけど、本当に予想通りだった。おじさんは逃げてるつもりだったのかも知れないけど、違うよ。誘導されてたんだ。…あいつらに」

棒立ちになった足下で、シーサーが全身を毛羽立たせてうずくまり震え出す。
死神の力のせいではない。
足下から、一瞬にして湧き出した無数のシャドウの気配に圧倒されたためである。

その数、数千、数万、いや、全てがこちらに向かってきながら解け合い、融合し、10から5へ、5から3、2、1の個体へと合体を繰り返し、気配の数は増減を繰り返しながらもその存在は練り合わせた墨の如く、重なり合い濃厚になりこちらに向かっているのがありありと分かった。

ビルの階下に渦巻く異質な気配の集合体。その力の濃さは、榎本の能力をしても今までで最大級だと激しく警鐘を鳴らしている。

どうして。
どうして気付かなかった!
これだけの強力なシャドウの気配を何一つ何故掴めなかった…!
サーチ能力に絶対的な自信を持っていた榎本は、これまでの自身のアイデンティティまでをも覆されたかのようなショックと焦りでただただおろおろとするばかりだったが、ファルロスは満月を仰いだまま、天に向かって怒気も露わに吠えた。

「出てきなよ。僕はここだ!!」

眼前の月が、妖しく揺らめく。
空間が歪み、それは黒いタールの塊となって、彼らの前に姿を現した。

地上から伸びた、ぶよぶよの長い胴体。
全身に開いた孔、孔、あな。
その頭頂部から白い仮面をまとった頭部が、鎌首をもたげるようにファルロスを頭上から見下ろす。

『 よんだー ? 』

ノイズ混じりの幼い声。
「愚者」がファルロスを見つけると、全身の顔という顔から嬉しそうな笑い声が無数にこぼれ、ビル群の間をこだましていった。












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