こだまする嘲笑。
*
「愚者…」
口に出して呟くと、目の前に起こっている全てが現実として鮮明に榎本の脳内に迫り、彼の腰と全身の力を抜き去り、その場に留めるに至った。
死神=ファルロスはそんな彼に見向きもせず、ただ眼前の白い仮面を見上げていた。
『 いつから きづいてた ?』
「少し前から。あと少し気付くのが遅かったら、巨大化した君に一瞬でぺちゃんこにされてただろうから」
『 そうだよー かくれんぼも じょうずに なったんだー おにいさんと おんなじ かくれんぼ できるこ たべたんだー 』
「やっぱり…影時間にペルソナの適性者を引きずり込んで能力を奪ったか…」
『 こうさん? おにさん こうたい だよー 』
「まさか。僕は君の事が知りたくて呼んだんだ。君を知る事が、自分の今居る意味を知る事に繋がるだろうから」
怯える様子も無い囚人パジャマの少年に、『愚者』は不満げに余り気味なたるんだスライム状の首を伸ばし、屋上に影を伸ばす。
『 なーにそれ? 』
『 いんちきー? 』
『 にげるのー? 』
「ちがうよ。聞かせて。君たちはどこから来たの?何故僕らを狙う?一体何が目的なんだい?」
『どうしてだっけ』『おにだからだよ』
『おにってなんだっけ』『おにごっこだよー』
『そうそうふたばちゃんがおになんだよー』
『だからこうたいなのー』
『おともだちいっぱいつれてきたよー』
『いろんなまちにいって いっぱいいっぱい』
屋上の階下からも聞こえる不満げなシャドウの鳴き声が、幾重にも重なりざわめきとなってビルの谷間を抜けていく。
それは路上で事件を遠巻きに見つめる冷やかしや人だかりと同じく、様々な声色が混ざりあって何を言っているのかイマイチ判別出来ない。
「説明になってない。それとも僕の勘違いかな…君たちなら、何か僕の知りたい情報を持っているかと思ったのに」
『しりたい?』
試すように、舐めるような見下した視線がファルロスの頭上にねっとりと絡みつく。
不愉快そうに「そうだね」と答えると、満足したようで白い仮面がニタリと笑みを浮かべた。
『 それならー あ そ ぼ 。 かったら おしえてあげる ままのこと 』
「ママ…僕たちの存在の母、だな…」
『あそぼ』『あっそぼ』
『あーそーぼー』『ねーあそぼーよ』
ビルの枯れた壁面に、老若男女の陰鬱な響きを混ぜた幼いノイズがこだまする。
榎本は耳を塞ぎ、偏頭痛に頭を抱える。
不安、焦燥、死への恐怖。
綯い交ぜになった畏れが、『愚者』の発する声と溶け合い、すっかり彼を混乱へと陥れていた。
集中出来るはずもなく、役に立たなくなった足腰を必死に叩いて鼓舞するも、下半身から下はぴくりとも動けなくなっていた。
「…いいよ。その代わり約束しろ。勝てば情報を全て教えると。そしてもう一つ、僕が勝ったら僕とフタバに二度と手を出すな」
『 どーして? ふたばちゃん こーたいよ? ひとりじめ するきなら 』
『愚者』の黒いスライム状の全身が、大きく波打った。
『 しんで くれる ?』
膨らんだ『愚者』の影に逆らうように少年の影が揺らめき、喪服の大男が大剣を手に、月光の中に像を成した。
「愚者…」
口に出して呟くと、目の前に起こっている全てが現実として鮮明に榎本の脳内に迫り、彼の腰と全身の力を抜き去り、その場に留めるに至った。
死神=ファルロスはそんな彼に見向きもせず、ただ眼前の白い仮面を見上げていた。
『 いつから きづいてた ?』
「少し前から。あと少し気付くのが遅かったら、巨大化した君に一瞬でぺちゃんこにされてただろうから」
『 そうだよー かくれんぼも じょうずに なったんだー おにいさんと おんなじ かくれんぼ できるこ たべたんだー 』
「やっぱり…影時間にペルソナの適性者を引きずり込んで能力を奪ったか…」
『 こうさん? おにさん こうたい だよー 』
「まさか。僕は君の事が知りたくて呼んだんだ。君を知る事が、自分の今居る意味を知る事に繋がるだろうから」
怯える様子も無い囚人パジャマの少年に、『愚者』は不満げに余り気味なたるんだスライム状の首を伸ばし、屋上に影を伸ばす。
『 なーにそれ? 』
『 いんちきー? 』
『 にげるのー? 』
「ちがうよ。聞かせて。君たちはどこから来たの?何故僕らを狙う?一体何が目的なんだい?」
『どうしてだっけ』『おにだからだよ』
『おにってなんだっけ』『おにごっこだよー』
『そうそうふたばちゃんがおになんだよー』
『だからこうたいなのー』
『おともだちいっぱいつれてきたよー』
『いろんなまちにいって いっぱいいっぱい』
屋上の階下からも聞こえる不満げなシャドウの鳴き声が、幾重にも重なりざわめきとなってビルの谷間を抜けていく。
それは路上で事件を遠巻きに見つめる冷やかしや人だかりと同じく、様々な声色が混ざりあって何を言っているのかイマイチ判別出来ない。
「説明になってない。それとも僕の勘違いかな…君たちなら、何か僕の知りたい情報を持っているかと思ったのに」
『しりたい?』
試すように、舐めるような見下した視線がファルロスの頭上にねっとりと絡みつく。
不愉快そうに「そうだね」と答えると、満足したようで白い仮面がニタリと笑みを浮かべた。
『 それならー あ そ ぼ 。 かったら おしえてあげる ままのこと 』
「ママ…僕たちの存在の母、だな…」
『あそぼ』『あっそぼ』
『あーそーぼー』『ねーあそぼーよ』
ビルの枯れた壁面に、老若男女の陰鬱な響きを混ぜた幼いノイズがこだまする。
榎本は耳を塞ぎ、偏頭痛に頭を抱える。
不安、焦燥、死への恐怖。
綯い交ぜになった畏れが、『愚者』の発する声と溶け合い、すっかり彼を混乱へと陥れていた。
集中出来るはずもなく、役に立たなくなった足腰を必死に叩いて鼓舞するも、下半身から下はぴくりとも動けなくなっていた。
「…いいよ。その代わり約束しろ。勝てば情報を全て教えると。そしてもう一つ、僕が勝ったら僕とフタバに二度と手を出すな」
『 どーして? ふたばちゃん こーたいよ? ひとりじめ するきなら 』
『愚者』の黒いスライム状の全身が、大きく波打った。
『 しんで くれる ?』
膨らんだ『愚者』の影に逆らうように少年の影が揺らめき、喪服の大男が大剣を手に、月光の中に像を成した。
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