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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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雫一粒。
*

剣舞が周辺を一閃すると、気配は瞬く間に消え失せ公園は静まりかえった。

降り立つ影の内から、大きな影が小さな人影を抱えて降り立つ。
足下に伸びる影は、普段よりも色濃く、また鮮明に寒空の下に輪郭を晒していた。

長年子供の歓声も聞かれなかったであろう、寂れた児童公園。
ブランコ、ゾウの滑り台、シーソーは全て錆と埃にまみれ、砂場はペットのトイレ代わり。石造りの水飲み場は苔むしている。
唯一剪定されているらしい木立と気持ちばかりの芝生だけが人気を感じさせた。
榎本は膝元に双葉の頭を乗せ乾いた柔らかな芝生の上に横にさせると、その上にコートを羽織らせ額に浮かんだ汗を丁寧にぬぐう。

蒼白な頬。真冬の郊外では異常なほどの発汗と体温。額は高熱を帯びているのに、首元は氷のように冷え切り、悪寒のためか先程から震えを感じる。
呼吸、心拍数共に不安定。呼びかけるも、目を覚まさない…。

『どう?治りそう?』
「良くないね。双葉君もだけど、僕も…」

そう一人愚痴って、榎本は脱力が抜けきらない己のひ弱さを嘆いた。
予想以上に、さっきの『愚者』の不意打ちがショックだったらしい、真に力を必要とされているにも関わらず肝心のペルソナ能力が疲弊しきっていた。ちゃんとした足場にたどり着けた安堵もあったのかも知れない。公園に降りた途端、全身に張りつめていた緊張がするするとほどけて代わりに言い様の無い倦怠感が全身にまとわりつく。
今現在、シーサーを一回召喚するのさえキツイ。
仕方なく、懐に常時しまっているピルケースを取り出す。

『それなに?』
興味深げに覗き込むデスに、榎本は「口開けて」と囁き、開かれたフルメタルの顎に小さな球体を放り込む。
口に含み、味わい、デスは嬉しそうに「ミルク味」と微笑んだ(ような気がした)。
同じものを口に含んで、榎本は「ソーマの雫だよ」と飴玉を口内に転がしながら答える。
「桐条の医者をやってるとね、そういうものが手に入るようになったんだ。それは桐条のお嬢さん用に開発された、即効性回復促進薬を蒸溜させた際に出来た固形物や残りカスを凝縮したもの。完成品の「ソーマ」に比べるとお粗末な代物だけど、そこそこは滋養になるはずだよ」
『ありがと。元気出てきた』
「良かった。もうしばらく踏ん張ってもらわないといけないだろうから。さて、一番元気になってもらわなきゃいけない彼には…」
大きな溜息を洩らして、榎本はコートから取り出しておいた紙袋の中に手を差し入れる。
あまり手にしたくない、重厚な金属の塊をしっかり手に掴み、取り出す。

「…やっぱり、これ、使わないと、無理、かも…」
堂島から預かっていた、拳銃型ペルソナ召喚機。
嗚呼、何故に先輩達はよりによって召喚機をこんな形状にしたんだか。
それとも、無意識に働きかけてくる蝶の紳士フィレモンの差し向けた試練なのか。
どちらにしろ、運命は何故にこれだけ気弱な自分を非日常な現実に引きずり込むのやら…。
正直言います。やっぱりあたまいたい。

だけど、迷う時間ももう無い。
サーチ能力は一時的なショックから完全回復したらしい、周辺に数多く存在するシャドウの現在地と頭数がはっきり見えてきた。
一番濃厚な影は、まっすぐにこちらに向かっているのがハッキリ感じ取れる。
このままなら、もう一人の僕は僕の心にあるであろう犬小屋の中でビクビクして出てこようとしないだろう。
僕はそういう奴だ。一度恐怖や痛みを思い知ると、次回は全力でそれから逃げる事だけを考えてしまう。
だが、今回だけはどんな手を使ってでも、そこから出てきてもらおうか。

「………南無三!」
形に反応してびくつく前に、有無を言わさず額に拳銃を当てて、引き金を、引いた。
心が一瞬虚ろになり、すぐさま上昇するような小気味よい感覚とともに精神が解放され、白銀の結晶が眼前で実像となり、温かな体温を持つ犬の姿を為し尻尾を振って姿を現す。
「す、すごい…もの凄い、簡単に…」
実際に召喚機の能力を目の当たりにし、榎本は素直に驚き、まじまじと手にした拳銃を眺める。
形状の善し悪しはともかく、やっぱりあのお二人は凄いな、と榎本は心から思った。

「そういえば、堂島さん、大丈夫かな…さっき襲われた時にペルソナ解除しちゃったからステルス消えてたらまずいしもう一回サーチして…」
『独り言の最中悪いけど、双葉を早く治療して。せっかく気分良くなったのにまた足下がぐらついてきた』
「えっ、でも…」
『お願い、双葉を先にして。早く』
「…わ、分かった。少し待って」
渋々、召喚機を手にしたまま、榎本は精神集中に入る。

「シーサー、癒しの波動セット。有事に備え結界スタンバイ」
双葉の傍らに伏せると、シーサーの足下から淡い乳白色の光が沸き立つ。
公園の敷地内に行き渡るように光が同心円状に流れ、同時に結界を形成する。
乳白色の波動の中心に横たわる双葉の面差しから苦痛の形相が取れ、榎本もデスもほっと胸をなで下ろす。

「…これで良し。僕の癒しの力、即効性は無いけど直に効いてくるはずだよ。ついでに周囲へテトラジャを敷いておいたから不意打ちも安心」
『有難う。これでまだ戦える』
「準備オッケーだね。それじゃ…」
堂島さんを、と言いかけた榎本の頭上に巨大な影が降りかかった。












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