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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

嘲笑が聞こえる。
『危ない!!』
影に向かってデスの大剣が翻る。思わず双葉を庇うように身構えた榎本の頭上を、ばっさり切り裂かれた黒い腕が二本三本と飛び散り、後方で地に落ちぐしゃりと潰れて霧散した。

「は、速い…」
思わず口からこぼれた畏れに、眼前へ突如現れた巨大な悪意は敏感に反応し、全身から嬉しそうに不愉快な笑い声を上げた。

『 こーたい こーたい はーやーくー 』
『 やくそくやぶりー 』『 うそつきー 』
『 うそつきはー わるいこの はじまりなんだ よー 』

「  …うぅ」
ペルソナと同じく、双葉を抱き抱え伏せたままの榎本に、短い双葉のうめき声が聞こえる。
双葉は榎本の腕を無意識に外すと、頭を抱え、耳を塞ぎ、苦痛に顔を歪め全身を縮こまらせた。

『おじさん、双葉をお願い。あいつに双葉を触れさせないで!』
「わ、分かった!」
『愚者!お前の相手は僕だ!かかってこい!』

デスが襲いかかってきた『愚者』に挑みかかる中、榎本は呻き苦しむ双葉を抱き抱える。
「双葉君、双葉君、しっかり、しっかりして…自分をしっかり持っ………双葉君?」
「 ごめ なさ い  めん さ い  ごめ ん  な さい …  ゆる し て …ぼくが ぼくの  ぼく の せいで  ごめん なさい ごめん な さ…」
「双葉君!」
「 ごめん なさい  ごめんなさい ごめんなさい   みん な ころして ごめんな さい …」
震える双葉の手を、榎本は力強く握りしめる。双葉の内面が、鮮明な画像を伴い否応無く榎本の精神に流れ込む。

ロンギヌスコピーの餌食となり、死んでいく子供たち。
血の臭い。肉の焦げる、腐る匂い。ホコリと腐敗臭の充満した鏡張りの部屋。
もがれた手足。血管のついたままの目玉。眼前で平然と行われる大人達の実験と殺戮と惨劇の饗宴。

子供達の罵詈雑言がこだまとなり、幾重にも多重低音を成し、頭を内側から激しく揺すぶる。
言葉は罵りとなり、それは見えざる鈍器となり、内面から無数の金槌に力一杯殴打されているような激痛が榎本に襲いかかる。
顔を背け、むせ返り嘔吐しかかりながらそれをこらえると、榎本は必死に双葉へ直接呼びかける。
まずい事になったと、胃液を吐き出しながら榎本は顔をしかめる。
内面は既に恐怖と苦痛で覆われ声が届かない。
今、シーサーが放っている癒しの波動だけでは劇的な効果は期待できないだろう。
ビジョンスキャンは既に先程試して有効でない事が分かってしまっている。
無理に使用し内面をこじ開けて内へ立ち入ろうとすれば、更に出てきた膿で自分はおろか下手をすれば双葉も発狂してしまう。
それならば、せめて物理的にでも彼に呼びかけなければ。

「…違うよ双葉君、それは過去の話、しかも君が望んでやったわけじゃない!忘れるんだ、辛い過去なんか忘れて楽になればいい!」
「 こわ い こわい こわい よ おとーさ ん  おとーさん たすけ て  …」
「双葉君、負けちゃ駄目だ、それはここには無い過去、既に過ぎ去った記憶、畏れでしかないんだ…」
呼びかける語気が自然と強くなる。
それがほんのわずかでも届くなら。
いや、ほんの一言も届かないとしても。
自分に出来る全てを尽くしたい。
榎本は、眼前に広がる異形のせめぎ合いを映画のように眺めながら、腕の内に在る少年の体温だけを生々しく感じていた。












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